2023.05.02
今では皆が知っている「深蒸し茶」
「深蒸し茶」の生みの親である 山本平三郎は、牧之原南部・相良地区の葉肉の厚い茶葉を、何とか製造で工夫して、個性的な茶に出来ないかと考え「ヤブキタ」という品種の香りというより、むしろ「味」に着目して、相良地区特有の強い味を、茶葉をしっかり蒸すことによって「まろやかな味」にすることに成功した。
うおがし銘茶創業者 土屋 正は、ちょうどその頃、山本平三郎氏の茶を聞きつけ、静岡県相良で出会います。
正は、平三郎の作った茶に大変感銘を受け、この茶に対して しっかりと火入れをしたところ、何とも言えない甘い香りとヤブキタの風味が出て、東京・築地で初めて、平三郎氏の作った強火のヤブキタ深蒸し茶を売り始めます。
あれから92年。
うおがし銘茶では、正と平三郎氏の目指した「深蒸し茶」の味を守り続け、日々お茶作りに励んでいます。
ところが最近「深蒸し茶の定義は?」とか「何秒から深蒸し茶」とかよく耳にします。
よく、蒸す時間で浅蒸し・中蒸し・深蒸しと分けたがる人がいますがこれは全くナンセンス。
何故かと言うと、産地ごと、品種ごとに葉肉の厚さが違うからです。
また、元気な芽重型の 葉肉の厚い茶葉を蒸すのと、やせた芽数型の葉肉の薄い茶葉を蒸すのでは、全く別物のお茶が出来てしまいます。
当然 葉肉が厚ければ、しっかり蒸しても形が残りますが、葉肉が薄ければ、ぼろぼろな茶になってしまいます。
この茶は「粉砕茶」と言います。
また大量に作るため、大量に茶葉を蒸し機に投入してしまうと何秒蒸しても蒸されませんね。
これは「むら蒸し茶」といいます。
全て畑から始まり、蒸し方・蒸した後の作り方、全て揃って初めて うおがし銘茶が認める深蒸し茶となるのです。
そして最大のポイントとなる蒸し時間は、これら条件が揃った上で、茶師が判断をします。
茶葉は蒸すと、青葉の香り〜甘い香りに変化して最後は無臭になります。この間で、茶師が判断を下します。
ですから、この茶葉は何秒、この品種は何秒、また新茶の始まりの柔らかいみる芽の茶葉は何秒、中間のやや伸びた茶葉は何秒、終盤の硬葉は何秒、と言うように 全て秒数は異なります。だから、何秒だから深蒸し茶になるという区切りは「ナンセンス」。
しっかり蒸した時の甘い香り、茶葉の持つ本来の青葉の香り、茶葉を見て蒸す方に寄せるのか、茶葉本来の香りに寄せるかが茶師の腕の見せどころ。
だから、深蒸し茶の定義などする必要がないのです。
深蒸し茶と呼ばれる前、その昔「フリースタイル」として呼ばれていたのも納
得ですね。
どんな蒸し方でも美味しくしてみせる、茶師の気概と感性で「うおがし銘茶」の茶は支えられてきたし、
これからも「うおがし銘茶」のお茶作りは、初代 正と平三郎氏が目指したお茶作りをただひたすら目指し、商品づくりに励みます。
インスタントや香料付けの、今風のお茶作りなど一過性なものは決してやらず、
ただただ いつの時代でも廃れない普遍的なお茶づくりを「うおがし銘茶」はしてまいります。